「教師や親がよくやる失敗は・・・」
「教師や親がよくやる失敗は、あまりきれいに説明しすぎることです。これでは子どもは口で反論できませんから、しかたなく手が出る、足が出る、ということになり、校内暴力や家庭内暴力に発展するわけです。子どもにしたら、暴れるよりしようがない。周囲がそのように仕向けてしまっているのです。言葉で攻撃できる余地を残すことが必要です。
だめなものは、理屈抜きではっきりと「だめ」と言ってやることも必要です。」
これは河合隼雄先生が書かれた『人の心はどこまでわかるか』からの抜粋です。
私達大人は、大人の理屈で、こども達を、大人の価値観の方向に導こうとしてしまいがちです。
こどものために良かれと思ってやってしまうのです。
だから、大人の価値観に反することをすると、こどもを説得しようとします。
または、あれこれ口を出してこどもをこちらが「正しい」と思う方向に動かそうとします。
現代のこども達は、我々世代のこども時代とは全く異なる環境で生きています。
なので、我々大人の常識が、こども達の将来に役立つとは限りませんし、反対に足を引っ張る可能性だってあります。
むしろ後者の可能性の方が高いかもしれません。
こども達の方は、リアルに『今』を生きているわけですから、大人が押し付けてくる価値観に腹が立ってきて当然です。
でも、こども達はまだ経験が足りないし、これまで親が正しいと思ってやってきたけど何か違う、と気づき始めたばかりなので、大人の理詰めにうまく反論できない。でも、納得はできない。イライラモヤモヤがごちゃついて「手が出る、足が出る」となってしまう。
我々大人も、理詰めされて反論できず、でも納得できない時の気持ちは経験済ですよね?そういう時って悔しいし、腹が立ちませんか?相手を憎いと思ったことも、あったかもしれません。
「だめなものは、理屈抜きではっきりと「だめ」と言ってやること」で、こどもは口で反論するチャンスが得られます。
こどもが暴力をしてしまうと、親はとても悲しい。
でも、実はこどもはもっと悲しいし、暴力をしてしまう度に“自分はダメな人間だ”と思ってしまう。
しかし、口で反論させてもらえないからどうしたらよいかわからない。
こどものためにも、こどもが暴力で反論しなくてもすむ工夫を、経験のある大人がやってあげたいですね。